今も尚根付く男性優位社会の中で、女性として生きることへの葛藤が歌詞から垣間見える、そんな歌。boygeniusというグループ名はとある人物の「男性アーティストの方が優れているから、女は彼らの歌を聞くべきだ」という発言を元につけられたそうですが、それからも察せられるように彼女たちの楽曲には社会的弱者の視点が共通しているように思います。でも怒りや反発といったオフェンシブな感情よりも、迷いながらも受け入れている姿勢が見えるのがなんだか現実的で深みを感じる。そんなところがかっこよくて好きです。エモーショナルでドラマティックなサウンドも最高。
Black hole opened in the kitchen
キッチンに空いたブラックホール
Every clock's a different time
時計は全部ずれてる
It would only take the energy to fix it
直すには気力さえあればいいのに
I don't know why I am
なぜできないのか、自分にもわからない
The way I am
それが私
Not strong enough to be your man
あなたの男になれるほど強くない
I tried, I can't
頑張ったけど、やめられないんだ
Stop staring at the ceiling fan and
シーリングファンをじっと見つめながら
Spinning out about things that haven't happened
起こりもしなかったことをぐずぐず考えて
Breathing in and out
息をするだけの時間を
Drag racing through the canyon
谷の間を猛スピードで走り抜ける
Singing "Boys Don't Cry"
ボーイズ・ドント・クライを歌いながら
Do you see us getting scraped up off the pavement?
舗道から運び出される私たちが見えるかな
I don't know why I am
なぜなのか、私にもわからない
The way I am
それが私
Not strong enough to be your man
あなたの男になれるほど強くない
I lied, I am
嘘をついて、私は
Just lowering your expectations
あなたの期待を裏切っただけ
Half a mind that keeps the other second-guessing
まだどこかああすればよかったなんて考えながら
Close my eyеs and count
目を閉じて思い返してる
Always an angel, never a god
いつも天使で、神様じゃない
I don't know why I am the way I am
なぜ私はこうなのか、私にもわからない
There's something in the static
根本に何かがあると
I think I've been having revelations
私は気づいていたんだと思う
Coming to in the front seat, nearly empty
ほとんど空っぽの前の席に座って
Skip the exit to our old street and go home
古い通りに続く出口を飛ばして家へ帰ろう
Go home alone
一人で家へ帰ろう
メモ
spin out
「スピンする」「時間をぐずぐず過ごす」
drag race
モータースポーツの一種。停止状態から直線コースを走り、ゴールするまでの時間を競う。
Boy's Don't Cry
1979年にリリースされたThe Cureの曲。
half a mind
「○○しようかなと思ってる」
Always an angel, never a god
このフレーズにあるgodは男性、angelは女性を表しています。男性は神のように社会の頂点に立てるけれども、女性はその使いである天使のように純粋で貞淑でなければならないというある種のステレオタイプを示唆するメタファーです。サビの"Not strong enough to be your man"(ちなみにこれはSheryl Crowの"Strong Enough"からとられたそう)には「私は女だから」あなたの男になるには力が足りないのだという意味が込められているのかもしれません。
static
「静的な」「固定された」
revelation
「暴露」「新事実」「啓示」